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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第87章 87 旅路
 都から離れ、小さな町が点在し始めるとなんだか星羅は懐かしい気がした。まばらな木々、舗装がなされてない、でこぼこの轍だらけの道。もう記憶には残っていないが、実の母、胡晶鈴と別れ、朱家の家族と旅した風景に似てるのかもしれないと星羅はあたりを眺めた。

「どうしただ? 子供が心配か?」
「ん? いや、徳樹はかあさまが見てくれているし、心配ない。ちょっと懐かしい気がしただけ」
「そうかそうか。さ、宿が見えてきただ」
「うん」

 小さな宿に着くと、許仲典はすぐさま馬を繋ぎ、水をやる。星羅が宿屋の主人に話をつけ終わると、馬たちはすでにゆっくり休んでいた。

「ごめんね。いっぱい走らせて」

 今回の旅には馬の優々は連れてこなかった。郭家から一日で千里を駆けるという名馬、汗血馬を2頭借りている。それでも途中で馬を変えねばならないだろう。

「馬は役に立って喜んでいるだよ」

 にこやかな許仲典に星羅は気が安らぐ。

「ありがとう。仲典さんがいなかったら馬を乗りつぶしてしまっていたかもしれない」
「んー。馬は優しいからなあ。星羅さんが走れと言えば倒れるまで走ってしまうかもな」

 馬の優々は倒れて泡を吹くまで、星羅の言うとおりに走るのだろうかと思うと胸が痛んだ。

「まあまあ。おらたちも飯食って寝るべ」
「だね」

 はやる心を抑えて星羅は食事をし寝床についた。駐屯地まではほぼ一本道なので迷うことはない。華夏国の中央を横断する道は、国境沿いに比べ、治安もよく盗賊もおらず安全だ。しかし飢饉の影響が出ているので、宿屋の食事は粗末で少なかった。
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