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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第91章 91 帰国
「いいのですか。お会いしなくて」
郭嘉益は永遠の別れになるだろうと慮って尋ねる。京湖は笑んで首を振る。
「西国に戻るわたくしに会えば、星羅はどうなるかわかりません。辛いことを目の当たりにさせたくはないのです」
慈愛に満ちた母である京湖の瞳は、黒曜石のように美しく潤み光っていた。普段から感情を抑えてきている、軍師の郭嘉益でさえ胸を打たれる。
将軍の合図で大きな木箱が二つ運ばれてきた。
「この中です。今は薬で眠ってもらっています。それと目隠しと耳栓をしてますから」
そっと覗くと、星羅と陸明樹が並んで横たわっている。明樹はやつれているが、星羅に異常は見られなかった。
「星羅……。婿殿、ごめんなさい」
最後にそっと星羅の髪に触れた。しっとりと艶のある美しい髪を記憶に閉じ込めるように両手で包む。
「さあ、これでいいでしょう」
将軍は郭嘉益に「これからも我が国と貴国が親しくありますように」と敬礼した。郭嘉益も拱手して頭を下げる。
「お元気で」
「星羅をよろしくお願いいたします」
京湖は将軍に連れられ、砂塵の中、西国に帰っていった。それに続いて、兵士たちや象軍も引き上げていく。郭嘉益は、華夏国の兵士に星羅と明樹の入った箱を運ぶように命令し、華夏国に戻った。
兵士たちもこの一連の人質の交換を見ていた。目を覚ました星羅がどんなに嘆き悲しむかと思うと同情せずにいられない。誰もが眠りから覚めないほうが良いだろうと思うくらいだった。
郭嘉益は永遠の別れになるだろうと慮って尋ねる。京湖は笑んで首を振る。
「西国に戻るわたくしに会えば、星羅はどうなるかわかりません。辛いことを目の当たりにさせたくはないのです」
慈愛に満ちた母である京湖の瞳は、黒曜石のように美しく潤み光っていた。普段から感情を抑えてきている、軍師の郭嘉益でさえ胸を打たれる。
将軍の合図で大きな木箱が二つ運ばれてきた。
「この中です。今は薬で眠ってもらっています。それと目隠しと耳栓をしてますから」
そっと覗くと、星羅と陸明樹が並んで横たわっている。明樹はやつれているが、星羅に異常は見られなかった。
「星羅……。婿殿、ごめんなさい」
最後にそっと星羅の髪に触れた。しっとりと艶のある美しい髪を記憶に閉じ込めるように両手で包む。
「さあ、これでいいでしょう」
将軍は郭嘉益に「これからも我が国と貴国が親しくありますように」と敬礼した。郭嘉益も拱手して頭を下げる。
「お元気で」
「星羅をよろしくお願いいたします」
京湖は将軍に連れられ、砂塵の中、西国に帰っていった。それに続いて、兵士たちや象軍も引き上げていく。郭嘉益は、華夏国の兵士に星羅と明樹の入った箱を運ぶように命令し、華夏国に戻った。
兵士たちもこの一連の人質の交換を見ていた。目を覚ました星羅がどんなに嘆き悲しむかと思うと同情せずにいられない。誰もが眠りから覚めないほうが良いだろうと思うくらいだった。