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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第97章 97 冷宮
 冷害による飢饉の影響は華夏国をじわじわと脅かす。都では備蓄と治安の良さでなんとか耐えているが、地方に行けば行くほど、殺伐としている。地方の暴動を抑えるために、都から軍を派遣すればそれだけ国の体力は奪われる。飢饉が収まるまで、中央への税を廃止し、北東部の県令が、配給を私物化したために即、極刑に処されたことを素早く伝達することで治安が保たれている。

 後宮でも食事は質素なものとなり妃たちも慎ましく生活している。王妃の桃華は毎年ある両親からの手紙が届かないことで一層、不安に見舞われている。後宮入りすれば、自身は外に出ることは叶わなくとも、家族からの面会には応じることが出来る。最初の数年は両親と、本来、妃になるはずだった姉が面会に来ていたが、入れ替わったことがばれるのではないかといつも不安な桃華は、すぐに部屋に引っ込んだ。年老いてきた両親も、そのうち都へ上がることが疲れるのか、手紙だけが届くようになった。

「この飢饉ですもの。もしや、父上と母上の身になにか……」

 桃華の実家、呂家は地方長官であるが役人なので食物の備蓄には農家と比べて乏しい。役人の権威など今は、飯一碗より低いに違いない。家族のことを憂いていると、すっと宮女がそばに寄り耳打ちを始める。

「お妃さま、ご家族が面会にいらしております」
「え? 家族? 父上? 母上?」

 臥せっていた身体を起こし、宮女に尋ねると、彼女は首を振り「妹君の李華さまでございます」と頭を下げた。

「李華……?」

 どうして彼女だけがやってくるのだろうかと、首をかしげたが実家の様子が知りたいので通すように宮女に告げると、入れ違いにすぐさま李華が入ってきた。
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