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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第103章 103 占い師
「あの、生みの母も観てもらえますか?」
「わかりました」

 先ほどの絵の札をまた集めて、混ぜ合わせ並べなおされた。歩いている異国の民と、輪の中で踊る人や、たくさんの棒を見た。

「ずっと旅をしています。自由の身でお元気ですよ。あなたのことをいつも気にかけていますが、お会いになれるのは随分先でしょう」
「随分先……。会えないかもしれないのですか?」
「会う必要があれば、きっと」
「そうですか。でも自由なのですね」
「あなたのことは良いのですか?」
「わたしのこと……」
「あなたは自分で道を切り拓いているのですね。誰かを頼ることなく。でもあなたのことをずっと見守っている方は多いのですよ。そのことをお忘れなく」
「ありがとうございます。では、これを」

 懐から銀貨を出し5枚ほど机に置く。しかし占い師は受け取らない。

「金はいりません。その代わり、あなたの髪を一房ください」 
「髪を?」

 星羅は言われるまま、頭の横にすっと指を入れ一房髪をとりだす。長い髪の先を占い師はそっと撫で「少しだけですから」と異国の刃物でちょきんと手のひらくらいの長さを切った。

 代金が金ではなく髪の毛とは変わった占い師だと思ったが、街頭の占い師に比べ、よく当たっていると思うので、価値が違うのかもしれない。

「これを一つどうぞ。お守りです」

 占い師は腰から下げられるような紐が付いた、小さな布包みを星羅に渡す。

「あの、それだけよく見えているのなら、太極府にお知らせしておきますよ」
「太極府……」
「ええ、太極府では、あの、昔、すごく的中率の高い占い師がいたのですが、今はなかなかそれだけの人がいないようで」
「うふふ。ありがとう。今夜でここの商売は最後なので結構です」
「そうですか。では、これで」
「お元気で」

 占い師にお元気でと言われて、やはり変わった挨拶だと思って星羅はまた道を歩き出した。手にしていた酒瓶がいつの間にかなくなって、代わりに布包みが手の中にある。あっと思って振り返ると、もう占い師の影も形も無くなっていた。
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