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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第104章 104 母の行方
「ご主人」

 食堂でぼんやり座っている、宿屋の主人らしく男に声を掛ける。かつてはふっくら喜色満面だったろう男は青白く頬こけ、腹だけが裕福さの名残を残している。

「お泊りですか? 食事は粥くらいしかありませんが」
「いや、泊りではない。あの、今、泊り客はいるか?」
「へえ。一組だけ」
「一組?」
「ご夫婦だと思いますが」
「夫婦……」

 晶鈴が男連れで泊まっているのか、それとも違う者なのか。思わず考えて止まっていると、主人が「おや、息子さんでしたか」と男装の星羅をみて合点がいった顔をする。星羅もその言葉で、泊り客は晶鈴だとわかった。

「今、部屋にいるだろうか」
「いえ、さっき町を一周してくるとお二人で出かけましたよ」
「町を一周……。どのくらいの時間がかかるだろうか」
「小さな町ですし、店も今閉まっているばかりで。すぐに戻ると思いますよ」
「では、ここで待たせてくれ」
「ええ、どうぞ。ただあいにく食事が……」
「気にしないでください。ああ、水だけ頂けたら」
「ええ、ええ。ああ、酒なら出せます」
「いや、今は水にしておこう」

 星羅は椅子に腰かけちびりちびり水を飲み、携帯食の干した硬い面包(パン)をかじる。しばらく頬杖を突き、国難に対する策に対して思いを巡らしていると、馬の優々の嘶きが聞こえた。
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