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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第107章 107 伯爵
 裕福な商家に買われた晶鈴は、奴隷というには破格の待遇を受けている。というのも、シルクロードを越えてきただけでなく、彼女の占術の腕前だった。
華夏国民である胡晶鈴は、浪漫国の貴族や裕福層には外見的にウケが悪かった。あっさりした顔立ちは、何を考えているのわかりづらく、異質に感じるようだ。

また他の奴隷たちは、奴隷らしくこそこそと下の者であるという卑屈そうな態度をとるが、晶鈴は飄々として買いに来るものを観察している。
奴隷を買いに来た者が、まるで自分が買われるような気持になっていた。
 晶鈴を買った商人は新しもの好きで、西国の隊商長に彼女のことを尋ねた。

「弱そうに見えて案外強いし、占いができますよ」
「ほう。占いか。ちょっと試してみるか。言葉はどうなのかね?」
「今は西国と土耳古国の言葉だけですが、すぐに覚えるでしょう」
「じゃあ、ちょっと聞いてみてくれ。今、南の国と北の国と取引しているんだが、どちらが利益が大きいか」

 隊商長は頷いて晶鈴に今の内容を伝える。いきなり占えと言われても晶鈴は「いいわ」と動揺することなく胸元から流雲石をとりだし占い始める。

「南は水の害があるから今回は期待できないわ。でも北から珍しい毛皮が届くようよ」

 結果を隊商長から聞いた商人は、目を見開き「なんと! 南の国には今回、船で海路を使ったのだ!」と大声を出す。髭を撫で、腹をさする。大柄で白い肌を持つ中年の商人は顔を紅潮させその場を行ったり来たりする。

「この娘を買おう」
「いいんですか? あたりかハズレかまだ分からないでしょう」
「確かにそうだが。わしの直感がこの娘を買ったほうがいいと言っておる」
「そうですか。ではあなたに売りましょう。晶鈴、この方が主人になる」

 形ばかりの檻から晶鈴は出され商人の目の前に立つ。

「姓はフー。名はジンリンです」
「ふむ。わしはジェイコブ・フガーだ。ここよりも西に屋敷がある」

 ゆったりとした駱駝色のチュニックをかぶった商人はそばで控えていた使用人に馬車を用意させた。話しぶりや態度は気さくで物腰も柔らかい。裕福商人らしく、余裕があるようで人使いは荒くないだろう。
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