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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第108章 108 解放
長く話したと思ったのに、わずかな時間しかたっていなかった。柄のついた湯飲みの中の、紅茶は温かい。
「ジンリン、よかったら私とこの国を廻ってみませんか? 自由の身なのですから」
「あの、わたしは華夏国へ戻る費用を貯めたいと思っているので」
「おやおや。そのような平凡なことを言ってはいけない。ここでじっとしているほうが華夏国へ戻る近道だと?」
「旅をするには相当の資金がひつようですから」
ジャーマンは少年のような瞳を見せてにっこり笑い、ジェイコブのほうに振り返る。
「彼女を連れて行ってもいいかな?」
「はあ……。いつまでも商売の手伝いというか、占ってもらっていたかったのだが」
「もう、必要ないのでは?」
「そういわれると確かにそうですがね」
「じゃあ、決まりだ」
「わしは良いですが、ジンリンの意志も尊重してやってくださいよ」
「ええ、もちろん。しかしあなたは良い商人だ。これからも国がどうなろうとも発展するでしょう」
「はははっ。これはどうも」
ジャーマンの言葉の意味を深く考えずにジェイコブはジンリンを手放した。
「善は急げだ。ジンリン、出かけよう」
いきなりやってきて、いきなり一緒に旅に出ようという瞬発力に、物事に動じない晶鈴もさすがに呆気にとられる。
「ジンリン。これは餞別だ。困ったら金に換えなさい」
ジェイコブは腕にはめていた純金の腕輪を外し晶鈴に渡す。
「ジェイコブ様……」
「機会というものは早々にない。それをジンリンもよく知っているだろう?」
「ええ、まさしく」
晶鈴の占いでも、好機が来たと出れば、ジェイコブは心配しながらでも乗ってきた。今では自然に、乗るべき波と、見送る波がわかる。流雲石しか持たない彼女は着の身着のままで、ジャーマンとともにフガー家を出る。
改めて立派な屋敷を眺めジェイコブに幸あれと祈る。ジェイコブはこの後、国が分裂しても翻弄されることなくフガー家を保ち続けるのだった。
「ジンリン、よかったら私とこの国を廻ってみませんか? 自由の身なのですから」
「あの、わたしは華夏国へ戻る費用を貯めたいと思っているので」
「おやおや。そのような平凡なことを言ってはいけない。ここでじっとしているほうが華夏国へ戻る近道だと?」
「旅をするには相当の資金がひつようですから」
ジャーマンは少年のような瞳を見せてにっこり笑い、ジェイコブのほうに振り返る。
「彼女を連れて行ってもいいかな?」
「はあ……。いつまでも商売の手伝いというか、占ってもらっていたかったのだが」
「もう、必要ないのでは?」
「そういわれると確かにそうですがね」
「じゃあ、決まりだ」
「わしは良いですが、ジンリンの意志も尊重してやってくださいよ」
「ええ、もちろん。しかしあなたは良い商人だ。これからも国がどうなろうとも発展するでしょう」
「はははっ。これはどうも」
ジャーマンの言葉の意味を深く考えずにジェイコブはジンリンを手放した。
「善は急げだ。ジンリン、出かけよう」
いきなりやってきて、いきなり一緒に旅に出ようという瞬発力に、物事に動じない晶鈴もさすがに呆気にとられる。
「ジンリン。これは餞別だ。困ったら金に換えなさい」
ジェイコブは腕にはめていた純金の腕輪を外し晶鈴に渡す。
「ジェイコブ様……」
「機会というものは早々にない。それをジンリンもよく知っているだろう?」
「ええ、まさしく」
晶鈴の占いでも、好機が来たと出れば、ジェイコブは心配しながらでも乗ってきた。今では自然に、乗るべき波と、見送る波がわかる。流雲石しか持たない彼女は着の身着のままで、ジャーマンとともにフガー家を出る。
改めて立派な屋敷を眺めジェイコブに幸あれと祈る。ジェイコブはこの後、国が分裂しても翻弄されることなくフガー家を保ち続けるのだった。