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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第112章 112 求婚
 滑らかな陶器製の風呂は疲れた星羅の身体も心も癒す。熱めの湯が心地よい。

「もっとお湯を足しましょうか?」

 中年の下女が御簾の向こうから声を掛けてくる。

「いえ、もういいわ。ありがとう」
「では、ごゆっくり」

 ゆっくりとと言われても、蒼樹も早く湯に入りたいだろうと手早くあちこちをこすり星羅は上がる。麻布で身体を拭き、蒼樹が貸してくれた美しい緑色の着物を羽織った。

「また、こんな上等な物を……」

 代々軍師家系である郭家は、質実剛健で質素な生活をしているが、やはり上質なものが取り揃えられている。身分というものはないが、郭家の人々は、内面も外見も庶民とは明らかに違っている。廊下を通り、庭を通りがかると木のたらいで湯あみをしている蒼樹が見えた。

「あ、蒼樹」
「ん? もう出たのか?」
「あの、蒼樹も入りたいだろうと思って」
「俺はここで身体を洗っていたのだ。言ってやればよかったな」
「気を使わせて、ごめん」
「いや、いい。湯冷めせぬように部屋に入っているといい」
「ありがとう」

 そそくさと星羅は立ち去る。たらいの中に座り込んでいる蒼樹の裸は月光に照らされてきらきらと輝いていた。引き締まった身体は逞しく滑らかでなまめかしい。
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