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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第112章 112 求婚
礼を言ったら帰ろうと客間で蒼樹を待った。下女が運んできた茶を啜っていると、大雑把にざっくりと着物を羽織った蒼樹がやってきた。胸元がはだけているのを見ないように星羅は気を付ける。
「ありがとう。落ち着いたから今夜はこれで失礼するよ」
「泊っていけ。寝台の用意もある」
「いや、でも」
「こんな日ぐらい一人でいることはないだろう」
無言でいる星羅の手首を蒼樹は握る。
「あ、あの」
「星羅。俺に嫁げ」
「え?」
いきなり不意打ちを食らったように星羅は、蒼樹の顔を凝視する。
「そんなに気を使ってくれなくても大丈夫よ。すぐに慣れるから」
兄が去り、明々が死に孤独に陥っているだろう自分に同情してくれているのだろうと星羅は思った。
「同情ではない。今のお前の弱っているところに付け入っているのだ」
「え?」
固まっている星羅を、蒼樹は遠慮せず抱きしめた。
「そ、蒼樹? 離して」
「それはできない相談だ。母親が言うように求婚を受けないのか。俺はずっとお前を好きだった。明樹殿から奪おうとは思わなかったが。しかし袁幸平にはやれぬ」
「袁殿は、別に」
「いや、あいつはそろそろ頃合いを見計らって求婚するだろう。しかもあいつのことだ手練手管できっと自分のものにしてしまうはず」
「そんな……」
「さっき星羅の家に行ったのも、袁幸平の行動が気になって見に行ったのだ。幸い今夜は来なかったようだが」
明々の死の悲しさで、星羅はなぜ蒼樹がやってきていたのか追求していなかったが、今、合点がいった。抱きしめられている蒼樹のはだけた胸元が星羅の頬に当たる。いつも冷静で動揺しないだろう蒼樹の心音が早く強く、星羅の耳に響く。
「ありがとう。落ち着いたから今夜はこれで失礼するよ」
「泊っていけ。寝台の用意もある」
「いや、でも」
「こんな日ぐらい一人でいることはないだろう」
無言でいる星羅の手首を蒼樹は握る。
「あ、あの」
「星羅。俺に嫁げ」
「え?」
いきなり不意打ちを食らったように星羅は、蒼樹の顔を凝視する。
「そんなに気を使ってくれなくても大丈夫よ。すぐに慣れるから」
兄が去り、明々が死に孤独に陥っているだろう自分に同情してくれているのだろうと星羅は思った。
「同情ではない。今のお前の弱っているところに付け入っているのだ」
「え?」
固まっている星羅を、蒼樹は遠慮せず抱きしめた。
「そ、蒼樹? 離して」
「それはできない相談だ。母親が言うように求婚を受けないのか。俺はずっとお前を好きだった。明樹殿から奪おうとは思わなかったが。しかし袁幸平にはやれぬ」
「袁殿は、別に」
「いや、あいつはそろそろ頃合いを見計らって求婚するだろう。しかもあいつのことだ手練手管できっと自分のものにしてしまうはず」
「そんな……」
「さっき星羅の家に行ったのも、袁幸平の行動が気になって見に行ったのだ。幸い今夜は来なかったようだが」
明々の死の悲しさで、星羅はなぜ蒼樹がやってきていたのか追求していなかったが、今、合点がいった。抱きしめられている蒼樹のはだけた胸元が星羅の頬に当たる。いつも冷静で動揺しないだろう蒼樹の心音が早く強く、星羅の耳に響く。