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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第117章 117 慶明の死
蝋燭だけがぼんやりと灯る薄暗い部屋で、慶明は静かに天井を眺める。自身で脈をとると、もう弱々しくとぎれとぎれで、いつ止まってもおかしくない。息も深く吸うことが面倒になってきたが、不思議と苦しくはなかった。
慶明が目を閉じようとした瞬間、ふっと空気が動くのを感じ目を開いた。
「慶明」
「晶鈴!」
寝台の隣に胡晶鈴が立っている。
「会いに来たわ」
「嬉しいよ。それにしてもあの頃と全く変わらないのだな。私はすっかり老いてしまったよ」
都から出るころと、寸分たがわぬ若々しさで胡晶鈴は愛くるしい目を向ける。
「ふふっ。慶明がそう思っているだけよ。ほら、庭を散歩しましょうよ」
「え、それは、さすがに無理だ」
「ううん、平気平気」
晶鈴が、慶明の手をとり引っ張り上げる。
「あっ」
もう起き上がることも立ち上がることも無理だと思っていた慶明は、ふわっと身体の軽さを感じ寝台から起き上がる。
「外へ行きましょう」
手を繋いで、庭に出る。空は満天の星空で美しく輝いている。庭を散歩する慶明は、足が窮屈だということを感じた。
「俺、履物苦手なんだよなあ」
「脱いじゃいなさいよ」
「そうだな」
いつの間にか、青年のころに戻った若々しい慶明は裸足になって庭を走り回った。足の裏に感じる草や砂利、土が心地よい。
「やあ、気持ちよかった。晶鈴、ありがとう」
「ううん。こちらこそ。星羅のことありがとう。ごめんなさいね、面倒かけっぱなしで」
「いいんだ。色々楽しかったし」
「もうこれ以上望むことはないの?」
「そうだなあ。隆明さまにも聞かれたけど、特にないかなあ。最後に晶鈴に会えたしさ」
「そう、じゃあまたわたしは旅に出るわ」
「気をつけてな。さよなら」
二人は遊んだ後、自分の家に帰るように別れた。
早朝、隙間風の冷たさに目が覚めた絹枝は、慶明が息絶えていることに気付く。
「あなた!」
もうどんなに呼んでも反応はなかった。慶明は穏やかにほほ笑んでいて、いい夢を見ながら眠っているようだった。
「穏やかに、逝かれたのね……」
安らいだ表情のおかげで、心痛することは少なかった。それよりも慶明がいつの間にか裸足になっていて、土で汚れていることが不思議だった。
慶明が目を閉じようとした瞬間、ふっと空気が動くのを感じ目を開いた。
「慶明」
「晶鈴!」
寝台の隣に胡晶鈴が立っている。
「会いに来たわ」
「嬉しいよ。それにしてもあの頃と全く変わらないのだな。私はすっかり老いてしまったよ」
都から出るころと、寸分たがわぬ若々しさで胡晶鈴は愛くるしい目を向ける。
「ふふっ。慶明がそう思っているだけよ。ほら、庭を散歩しましょうよ」
「え、それは、さすがに無理だ」
「ううん、平気平気」
晶鈴が、慶明の手をとり引っ張り上げる。
「あっ」
もう起き上がることも立ち上がることも無理だと思っていた慶明は、ふわっと身体の軽さを感じ寝台から起き上がる。
「外へ行きましょう」
手を繋いで、庭に出る。空は満天の星空で美しく輝いている。庭を散歩する慶明は、足が窮屈だということを感じた。
「俺、履物苦手なんだよなあ」
「脱いじゃいなさいよ」
「そうだな」
いつの間にか、青年のころに戻った若々しい慶明は裸足になって庭を走り回った。足の裏に感じる草や砂利、土が心地よい。
「やあ、気持ちよかった。晶鈴、ありがとう」
「ううん。こちらこそ。星羅のことありがとう。ごめんなさいね、面倒かけっぱなしで」
「いいんだ。色々楽しかったし」
「もうこれ以上望むことはないの?」
「そうだなあ。隆明さまにも聞かれたけど、特にないかなあ。最後に晶鈴に会えたしさ」
「そう、じゃあまたわたしは旅に出るわ」
「気をつけてな。さよなら」
二人は遊んだ後、自分の家に帰るように別れた。
早朝、隙間風の冷たさに目が覚めた絹枝は、慶明が息絶えていることに気付く。
「あなた!」
もうどんなに呼んでも反応はなかった。慶明は穏やかにほほ笑んでいて、いい夢を見ながら眠っているようだった。
「穏やかに、逝かれたのね……」
安らいだ表情のおかげで、心痛することは少なかった。それよりも慶明がいつの間にか裸足になっていて、土で汚れていることが不思議だった。