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第5章 翼のこと

　ヨク（翼）は、出戻り奴隷だ。

　彼（ご主人様）に、激しく啖呵を切って出て行った。
　それなのに、戻ってきた。

　出て行ってから戻ってくるまでの間に、何をしていたのかは誰も知らない。
　彼が話すことを禁じたからだ。

　ヨクには、彼の元から出て行った時と、戻ってきた時との間には、一切の時間がないことになっている。途切れることなく、ヨクは、彼に奴隷として仕えていることになっている。

　彼も、ヨク、そして皆も、その様に振る舞う。
　そのことが、ヨクにとって救いになっているのか？それとも責め苦になっているのかはわからない。