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M嬢のいる風景
第10章 魂たるピアノを穢した「あずさ」のこと
 あずさは、彼(=ご主人様)の元を去った数少ない女性の一人である。

 あずさは音大生だった。ピアノ科に所属して、その才能は相当なものだったらしい。

 ただ、あずさはピアノを奏でるのが苦痛だった。あずさのピアノは、周囲の大人の思惑によって続けさせられてきていた。
 あずさはピアノを嫌悪し、そこから逃れようともがいていた。

 そんな時、あずさは彼に出会った。
 彼の前に跪き、首輪を頂いて、あずさは奴隷になった。

 彼が、あずさに下した命令は残酷だった。
 この先、一生、ピアノの鍵盤に触れてはならない。あずさを責める時の台座としてピアノが使われる。というものだった。

 彼の住処の一室にはグランドピアノが置いてある。本来の持ち主の未亡人が使っていたピアノだ。

 あずさは、そのピアノの上に大の字に寝かせられた。手脚の先を縛られ、その縄尻はピアノの脚部に結わえ付けられた。
 大きく広げられた脚の間に鍵盤があり、あずさの首から先はピアノからあふれ、垂れ下がっていた。
 そのまま、あずさは、あらゆる種類の責めを受けた。

 あずさの身体から「輩出」させることのできるあらゆる種類の物質を、強制的に、噴き出させられた。

 台座にされたピアノは、あずさの内側から出た様々な液体や個体、そしてはしたなく醜い呪詛の言葉にまみれ、汚れた。

 責めが終わり、戒めが解かれ、理性が戻るにつれ、目の前のピアノの惨状に心が震え始めた。
 あずさは、呆然とした足取りで彼の元を去った。それが、最初で最後の彼から受けた責めだった。

 その後、彼はあずさの事を口にしない。
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