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M嬢のいる風景
第4章 魂を狩り取られた者たちの居る風景(別景)
 Kという女が死んだ。

 娘の身代わりとなって、私に縛られた女だ。
 私が植えた霊糸に惑わされて、家族全員を絶望の淵に追いやった末に、家を飛び出した女だ。

 その後も、生真面目な若い男を狙っては籠絡し、堕落させては捨てるを繰り返していた。
 その様を共有しながら、私の心は存分に愉しんでいた。

 Kが五人目の男をたらしこんだ時だった。
 錯乱した男の恋人に刺された。
 刺されたのは太ももだったが、偶然にも刃は深々と動脈に達した。
 私は、事きれるまで、Kに付き合ってやった。

 生憎と私自身に直接に痛みが伝わる事は無かったが、Kが小路の片隅で力尽きていく過程の苦痛や、絶望、自失を眺めることができた。

 肉体が生命活動を停止した瞬間に、魂と身体を繋いでいた霊糸が解けた。
 Kの魂は身体を離れ、浮遊した。

 霊糸を引っ張ってやると、程なくして魂が私の手元にやって来た。
 繋がれている為に彼岸へも行けないらしい。

 哀れだが、とても可笑しくもあった。

 奴隷のひとりに金魚鉢を買ってこさせた。
 部屋の片隅に置き、その中へKの魂を放り込んだ。これで、不用意に転がっていくことあるまい。

 Kの魂の使い道は決まっている。
 女達のうちの一人を選んで、観念への入り口から押し込んでやるのだ。
 二つの魂を持たされた女がどんな変化を示すか興味深い。

 どの女にしようか。
 まず最初に浮かんだのは、Kの娘の顔だった。
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