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第32章 落ち着かない打ち上げ

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イタリアンレストランのパーティールームを
貸し切って行われた公演の打ち上げは賑やかだった。
綾子たちの女子大の学生も多いからだろう。

放送研究部のある大学の学生だけなら
居酒屋で済ませてしまうのだろう、
綾子もそんな想像をしていたから
そのオシャレな感じに気持ちも晴れやかに
なりたいところだったけれど
やはり落ち着かなかった。

あ〜、でもこんなにオシャレなら、
あのワンピースにするんだったな。
濃紺のジーンズに黒いTシャツ、
いかにも裏方の黒ずくめの姿だった。

まあ、アタシ、出ていたわけじゃないしな。
美味しいものでも食べよっかな。

でも、やっぱり来ないんだ。

綾子が落ち着かない理由の
大きなことは、
主演女優のミドリの不在だった。

さっき、照明室に来てくれたのが
会った最後、
多分ホテルにいるのだろう。
綾子のバッグには
もともとはタツヤが渡されていた
部屋のカードキーもある。

打ち上げのお店からも
１５分もあれば歩いていける。
それでも来ないというのには
それなりの理由があるのだろう。

健一部長と別れたのが原因なのかか。
それしかないよね。
いくら公演が成功したと言っても
それだったら二人で並んで、
みんなから褒められるなんて
きっと嫌に違いない。

ま、でもあとで会えるから。
昨日一緒に買ったワンピース見てもらうんだ。

それにしても
健一部長の周り女の子だらけ。
でも、なんでそこにカオルちゃんがいるの？