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真紅の花嫁
第10章 蒼い火花


「ふたりのときは、ぼくを〈ご主人さま〉って呼ぶんだ。
   わかった?」

「はい、ご主人さま」

うれしそうに言い、急に恥ずかしくなったのか、少年に抱きつく。


「亮くんが、わたしのご主人さま
    ……大好きな、大好きな、わたしのご主人さま」

そう繰り返しながら、まるで尻尾でも振るように、胸のふくらみを男の胸板にぐいぐいと押しつけた。

ズボンの前をまさぐり、脱がそうとするのを、亮がとめた。


「ペットはご主人さまのどんな命令にも従わなくちゃ駄目なんだよ」

「はい……どんないやらしいことでも、命じてください」


亮は年上の恋人に微笑んで、立ち上がった。
綾音は不安と期待を入り混じらせて、亮の動きを見守っている。


ゆっくりとクローゼットに近づいてくるのに、真波はなす術《すべ》もない。



「驚いちゃだめだよ」

いきなりクローゼットの扉が開けられた。


一瞬ののち、魂切《たまぎ》るような悲鳴が、女子大生の口から上がった。

「ゃああああああっ!」



これまでの甘い気持ちが吹き飛ぶ瞬間だった。

一糸まとわぬ裸身をソファに丸め、両腕に顔をうずめて、なおも悲鳴を上げ続けた。




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