この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真紅の花嫁
第19章 真紅の花嫁
「大丈夫。
ほんとうの真波は、ぼくだけが知っている」
安心させるように、亮は微笑んだ。
(そう。ほんとうのわたしを知ってるのは、この子だけ)
「好きな時に会いに行くから。
いつでも、どんな所でも、ちゃんと準備して待っててくれるよね」
「はい」
誓いのキスを待ち構えていたら、亮は自分の指をきりりと噛んだ。
差し出された指先の血玉。
手首には、くっきりと薔薇のあざがあった。
真波は息も出来ず、呆然とそれを見つめた。
以前には、こんな痣はなかったはずだ。
現実が崩れ、法悦に包まれる。
(このひとが…………
……亮が、写真の…………)
中学の美術室で見た絵、記憶の底に霞んでいた絵が焦点を結ぶ。
真波はウェディングドレスで跪き、少年の指を口に含んだ。
亮の血が喉を通り、身体に沁みわたるにつれ、白いドレスは徐々に赤く、真紅に染まってゆく。
(終)