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真紅の花嫁
第10章 蒼い火花
「いゃああああっ!
こんなの、いゃあああああっ!」
どうしていいのか判らないのは、真波も同じだ。
しかし、衣類の間で呆然としていたのは、わずかの間である。
すぐに気を取り直し、憤然たる面持ちでクローゼットを出た。
「帰らせてもらうわ」
声が震えないようにするのが精いっぱいだった。
足早にドアに向かう途中で、二の腕を掴まれた。
「ちょっと、離しなさいっ」
「悪いけど、もう少し、付き合ってもらうよ」
男の手を振りほどき、二、三歩下がって、バッグに手を入れる。
「ち、近寄らないでっ」
眦を決して、スタンガンを突きつけた。
少年の頬に、皮肉な笑みが刻まれた。
「真波さんって、ほんとうに面白い人だなあ」
くくくっ、と笑いながら、平然と近づいてくる。
「近寄らないでって言ってるのよ。
怪我をするわよ……あっ」
スイッチを入れて威嚇する暇もなかった。
護身具を持った手を掴まれ、ぐいっと背後にひねられた。
あっさりとスタンガンを取り上げられる。
「やっ……な、なに……
やめて、やめなさいっ」
手首にカシャッと金属の輪がかかる感触があった。