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真紅の花嫁
第14章 茜色の空


紀美子はちょうど通りがかった店員を呼び止め、グラスワインを注文した。
すぐに運ばれてきたワインを一口飲んで、語りはじめる。



「亮はね、中学一年の途中で転校してきたの。

  その時から、普通じゃなかった。
  すごく大人びていて、まわりから浮いていたわ。

もちろんあの美貌だから、女子には人気があったわね。
でも、陰でキャーキャー言うだけで、直接アタックするとか、そういうんじゃないの。
彼の超然とした態度が、そういうのを許す雰囲気じゃなかった。


で、二学期が終わるころかな。放課後の美術室でいきなりキスされて
  ――そのまま深い仲になったわけ」


さらっと口にするが、相手は未成年も未成年、まだ十三歳だ。
三十過ぎの教師との、あまりにも異常な関係。どんな弁明もできる状況ではない。


紀美子は軽く肩をすくめて、

「笑うかもしれないけど、それまでは真面目一方の教師だったのよ。

そっちの方面では疎すぎるくらいの。
三十過ぎて、まともに交際した相手もいなくて、親が心配するほど。

教え子と関係するなんて、想像すらしたことがなかった。


それが、まあ……
  でもね、亮のあの眼に見つめられると拒否できなくなるの。
あなたも分かってるでしょうけど」

真波に意味ありげな視線を送る。




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