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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
すぐ後ろでガラガラガラと大きな音がした。
大型のカゴ台車が数台、通り過ぎてゆく。
そのどれにも、大小さまざまなタトウ箱が、縦にいくつも並んでいた。
押しているのは紺の作業服の男たちだ。
明日からの企画会のために、五十数点の作品の搬入がはじまっていた。
三分の二は各地の美術館の所蔵品、
のこりは個人蔵のものだ。
今回の展示用に真波や市ノ瀬が地道な交渉を続け、ようやく借用することができた貴重な作品ばかりである。
美術品専門の運搬業者だから間違いはないはずだが、万が一のことでもあれば想像もしたくない事態となる。
台車について展示室に行くと、数人の作業員がてきぱきとタトウ箱を並べていた。
朝比奈美術館で預かっていた朝山紫郎の作品である。
それだけでも二十数点。
これから真波たちが練ったレイアウト指定にしたがい、壁に展示していくのだ。