この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
古い写真だった。
セピア色にくすんだ写真に写っているのは、アトリエ風の室内で仲良く肩を並べた一組の男女。
うしろには、キャンバスに掛けられた風景画があった。
一目で朝山紫郎の絵だとわかる。
異様なのは、男女のどちらも絵筆をもっていることだ。
まるで一緒に一枚の絵を描いているかのよう。
椅子に座った女性は三十代前半だろうか。
品よく結い上げた黒髪の女性は綾乃夫人だった。
知的で上品な美貌を、横に立つほっそりとした美少年に向けている。
少年の片手は綾乃夫人の肩を抱いていた。
手首には薔薇を思わせる赤痣。
二人の唇は触れ合わんばかり。
真波は信じられない思いでその少年を見た。
他人の空似というレベルではない。
亮と瓜二つの少年が、写真の中で無邪気に笑っていた。