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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶


古い写真だった。

セピア色にくすんだ写真に写っているのは、アトリエ風の室内で仲良く肩を並べた一組の男女。
うしろには、キャンバスに掛けられた風景画があった。


一目で朝山紫郎の絵だとわかる。


異様なのは、男女のどちらも絵筆をもっていることだ。
まるで一緒に一枚の絵を描いているかのよう。


椅子に座った女性は三十代前半だろうか。
品よく結い上げた黒髪の女性は綾乃夫人だった。
知的で上品な美貌を、横に立つほっそりとした美少年に向けている。

少年の片手は綾乃夫人の肩を抱いていた。
手首には薔薇を思わせる赤痣。

二人の唇は触れ合わんばかり。



真波は信じられない思いでその少年を見た。


他人の空似というレベルではない。
亮と瓜二つの少年が、写真の中で無邪気に笑っていた。





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