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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
「美術の知識もないバカ女が、なにやってんだって、絶対思ってました。
わかりますよ、それくらい。
でも、かまいません。
それって、本当ですから」
不気味な笑顔が消えた。
怖い眼で真波をにらむ。
「亮くんに近づかないでください」
きっぱりと言って、バッグから可愛らしい手帳を取り出した。
はさんであった写真をテーブルに置く。
「わたしの名前、綾乃さんにちなんで付けられたって、知ってますよね。
母の祖母で、矢崎さんの研究している朝山紫郎を世話していた女の人」
「ええ……」
「姫川の実家にあった綾乃さんの遺品――
宝石箱の隠し引き出しから、これを見つけました」
勝ち誇ったように、写真をこちらに押し出した。
「亮くんはずっと綾乃さんとの再会を願っていて
――わたしと出会ったんです。
わたしと亮くん、こうなるのが運命だったんです」