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真紅の花嫁
第16章 仄白い指
事務室に戻る途中の廊下で、亮に出くわした。
運悪く周りに誰もいなかった。
平気な顔を装ってすれ違おうとしたら、少年がくんくんと鼻を鳴らして、
「臭うね」
ビクッとして立ち止まる。
「矢崎さん、いやらしい臭いしてる」
にらみつけようとした。
小馬鹿にした笑みでも浮かべていたら、即座に引っぱたくつもりだった。
端正な美貌は思いつめた表情をしていた。
(……え?)
胸がトクンと跳ねる。
わずかの間、見つめ合った。
少年は急に不機嫌な顔になって、真波の手を取った。
すぐ横の創作室に連れ込まれる。
創作講座や子供たちを集めてのワークショップのための部屋だが、今日の予定は終了していた。