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真紅の花嫁
第2章 濃藍のフィアンセ
毎日がせわしく、雑事も多くて疲れるが、〈朝山紫郎と日本の幻想絵画展〉がもう少しで実現するかと思うと、充実感と満足感が湧いてくる。
「やっぱり、この仕事好きかな」
にっこり笑って、やわらかい子牛の肉に舌鼓を打った。
「そういうと思った。
僕には美術のことは、まるっきりチンプンカンプンだけどね」
陽介の唯一の欠点は、芸術をまるで理解できないことだ。
それでも、真波がこの仕事に向けた情熱は、ちゃんと尊重してくれる。
結婚後も学芸員の仕事を続けることも、受け入れてくれた。
(それで充分)
気づかいも仕事も出来る婚約者に、熱い眼差しを送る。
久しぶりのデートに、ついワインを飲み過ぎてしまった。
身体の芯が熱く火照ってくる。
「部屋をとってあるんだ。
明日の朝まで一緒にいたいな」
陽介はテーブルの上の真波の手に、そっと手を重ねた。