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真紅の花嫁
第2章 濃藍のフィアンセ
真波も綾乃夫人の写真を見たことがあったが、知的な雰囲気の、神秘的な美しさをもった女性だった。
少女の憧れの存在となってもおかしくない。
しかし、その程度なら、お嬢さまの単なる気まぐれのような気がした。
「美術館で働いてみたい、か」
次の一口を切り分けながら、ふと口をついて出てしまう。
陽介は聞き逃さなかった。
「不満そうだね」
首を振って、あわててごまかす。
「違うの。そういう憧れが大事だなってこと。
わたしだって、そういう時期があったはずなのよ」
「今はなくなった?」
陽介の問いに、真波はフォークを持った手をとめた。