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真紅の花嫁
第19章 真紅の花嫁
寝室に移動した。
こちらも全面のガラス窓で、照明をつけなくとも、外の灯りで互いの姿がはっきりと見える。
亮の美貌がきらびやかな夜景を反射して、仄かに赤く染まっていた。
「ぼくのどんな命令でも守れる?」
「はい」
病めるときも、健やかなるときも。
富める時も、貧しき時も。
「ずっと僕のものになるよね」
「はい」
死が二人を分かつまで。
式場の教会で誓ったことばを胸の中で反芻する。
あの日、すでに真波は自ら選んだのだ。
亮のものになると。
どんな命令でもきくと。
だから――
陽介と結婚しろ、と言われても、黙って従った。
予定通り式を挙げ、武藤家の一員となった。
父と母は涙を流して悦び、美術館の仲間も祝福してくれた。
綾音もこれで真波が片付いたと安心したようだった。
本当の目的を知っている者は誰もいなかった。