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真紅の花嫁
第1章 深緑の美術館


アートウォール(樹脂製調湿材)製の壁と床。
ずらりと並んだスチール棚に、絵画を収めたタトウ箱が、何百となく立てかけられている。

展示されている美術品以外の、美術館の所蔵品が保管されている収蔵庫だ。

省エネで、天井照明の半分はLEDが抜かれ、あたりは薄暗い。
湿度・温度を一定に保つため、常時適切な空調がされているなずなのに、どこか黴臭いような独特の匂いがした。



傷口に触れる濡れた舌の感触に、はっと我に返る。

「桐原くん、もうやめて」

顔を赤らめ、再度、右手を引いた。
亮は素直に指先を解放してくれた。

血はすっかり拭われ、五ミリほどの傷口が細く赤い筋を見せているだけだった。


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