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真紅の花嫁
第4章 萌黄の令嬢
しばらく声も物音もしない。
廊下で息をひそめている自分が、ひどくみっともない気がして、その場を離れようとしたタイミングで、また声がした。
「……本気なの?」
さっきより小さな囁きなのに、はっきりと声の主がわかった。
間違いない。姫川綾音だ。
「はああ……亮、くん……ん、んんっ」
衣擦れの音と、なんだか妖しい息づかいが続く。
そっとドアの隙間からのぞいた。
窓際で、綾音と亮が唇を重ねていた。
女の華奢な両肩に手をかけて、顔を傾けている亮。
長い睫毛を伏せて、うっとりと瞳を閉じている綾音。
カーテン越しの淡い陽光に、若いふたりの姿がシルエットになって、まるで映画の一シーンのようだった。