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真紅の花嫁
第7章 肌色の動画
誰かに見られているような気がして、そっと周りを見回した。
無表情に閉じている白塗りのドア。
モスグリーンのカーテンの掛かった窓。
ベッドと本棚。
本棚の前に山積みとなった美術関連書。
長年見慣れた自分の部屋である。
階下では、両親がテレビを見ているはずだ。
再び、机の上のノートパソコンに眼を向けた。
デスクトップに開いたメモリ内部のウィンドウ。
ファイルを現す五つのアイコン。
時刻は午後十時半を過ぎている。
美術館から帰宅したところだった。
(どういうつもりなの)
頭の中が混乱して、まともな思考ができない。
真波はこめかみを押さえた。
USBメモリを渡されたのは、今日の夕方。
桐原亮がアルバイトを終えての帰り際だ。
「これ、昼間たのまれたやつ」
ごく自然な動作で差し出され、真波は思わず受け取ってしまった。
亮に何かたのんだ覚えなどなかった。
「じゃあ、あしたもよろしくー」
スタッフ全員に無邪気な笑顔をふりまいて去っていく。
どこから見ても、素直で明るい高校生だった。