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Q 強制受精で生まれる私
第8章 3.0度目
「ですから、治療を始める前に先に済ませてきて下さい。今日は挿れないとはいえ、また漏らしてしまうかもしれません。感度良いですからね、浜園さん。」

「け、結構です!! 余計なお世話よ!! あなたが優しくすればいいだけのことじゃないですか!!」

 先生の手が止まり、背を向けてても分かる程の大きな溜め息を付く。確かに先生の言う通り、済ませてきた方が賢明だ。この病院を汚すのは別にいいとして、あんな恥辱をまた見られるのは懲り懲りだ。

 だけど私が席を外しているほんの一瞬の隙に、仕掛けたカメラが見つかってしまうかもしれない。唯一の希望をこんな些細なことで失う訳にはいかないのだ。

「そうですか…なら仕方ありません。先に導尿から済ませます。強がりは結構ですが、撒き散らされたらたまったものじゃありませんから。」

 そう言って私へ振り返る先生の手には見慣れない医療機器が握られている。鉤状のピンセットの様な金具。赤茶色の丸い何かが入った三連のパック。そして一際目立つ未開封の袋に入った、透明なチューブ。詳しいことは分からないけど、それらの器具と先生の発言からこれから何をされるのかは想像に難くなかった。

「そのチューブは何? そ、そんな物を私に入れるつもり!?」

「えぇ、そうです。カテーテル…と言っても何だか分かりませんよね。まぁ簡単に言えば中が空洞になっている細いチューブなのですが、意地っ張りな浜園さんには今からこれを尿道に入れて、空になるまで尿を排出して頂きます。」

 見た目は確かに細い管だけど、異物以外何物でもないあれを私の、しかもあの穴に入れるなんて、考えただけでもゾッとする。

「狂ってるわ…何でそんなことを平気で言えるの?」

「お言葉ですがおかしいのは貴方の方です。わざわざ一番楽な方法を提示しているのに、それを無下にするのですから。気を付けないと感染症のリスクだって高いのに。これも嫌だと仰るのなら、私は別にし瓶でも構わないんですよ?」

 先生は私の目の前にじょうろみたいな形をしたポリ容器を持ち出して、私に突き付ける。すっぽりと覆い被せる程口が広い、半透明なそれは見ているだけで汚らわしく感じる。
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