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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第3章 血まみれ道化師と血みどろお人形
 ころん、からん、と聞き覚えのある音が聞こえた。

 舞台の上に、あの子が現れる。

 見覚えのある下駄に、先ほど外で踊っていたときより多少は華やかな着物。長い袖を、ひらり、ひらり、揺らし、舞台の真ん中でお辞儀をひとつ。

 さあさ、よおく、ご覧ください。この子の顔、とってもうつくしいでしょう。だがそれだけじゃあございません。ほうら、このひとみ。血を溶かしこんだ悪夢色。勿論天然ものでございます。ひと呼んで化け物のひとみ。何の因果か因縁か、前世の行いの報いであるのか。さあさ、とくとご覧あれ。

 彼はゆっくりとひとみを見開いて見せる。長い睫毛の下で、鮮やかな宝石の如き目玉がふたつ、ぎらり、ぎらりと輝いた。

 どこからか、ほう、とため息をつくのが聞こえる。ひとみの色が赤いだけ、と云うだけならば、より形の奇妙であるものがいくらでもいるこのサアカスでは、さして珍しくない。それでも彼の人形のようにうつくしい顔は、他に比類ない。

 そして、唐突にうつくしい人形は、歌い、踊り出す。

 その細く白い喉から出ているとは到底思えぬ、ざらざらと耳障りな歌声。まるでむやみ矢鱈と鳴く鴉のよう。踊りは外でしていたのと似ている。まだ見られるものではあるが、本当に生きているのかと疑いたくなるほど不気味な動きだ。
 なるほど、確かにこれは、人間であると紹介されるより、発条仕掛けの玩具であると云われた方が、まだ納得できる。

 ……それにしても、醜い。

 歌いながら踊るにしては、歌に力を使い過ぎている。まだ踊りの方が見られるもの、と云う意見は変わらぬが、そのせいでいよいよもってちぐはぐさが拭えない。歌に関しては論外だ。鍛えることを知らず、大きな声さえ出すことができれば良いと思っている。いや、あれは、力任せに踊っているせいで、全く腹の筋肉を使えていないのかもしれぬ。あのままでは早晩、からだが壊れる。

 高いと低いの中間の声。おそらくは変声期を終えたばかりであろう。華奢な姿かたちとざらついた声の落差が酷い。一番無理をしてはいけない時期だと云うのにこのように喉を酷使していては、暫くもせぬ内に声が枯れてでなくなるだろう。とはいっても、きっと、彼を歌わせるものはそのようなことを一切考えておらぬのだ。ただ見世物になればいいとだけ思っている。
 西園寺は、小さく舌打ちをした。
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