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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第3章 血まみれ道化師と血みどろお人形
 あの声は、鍛えればもっとずっと聞くに堪えるものになる。

 それどころか、かつて自分がそう呼ばれたような、__

 そこまで思って、西園寺は己の業の深さに、人知れずため息をつく。

 己を追い詰めて追い詰めて、尚も離さぬあの衝動。
 舞台の上のあの子を見つめてしまうのだって、まったく諦めのつかぬ証拠。

 灰色の、曇り硝子の箱を思い出す。小さな硝子の箱の中、ぱきりと手折られた金の薔薇。

 あそこには二度と、戻りたくない。決して、決してあのような屈辱は、二度と。

 それなのに、こころは未だ、沸き立つ機会を待っている。

 うつくしいものを、芸術を。この手で作り上げる恍惚の世界を。

 ふいに吐き気がこみ上げる。

 生まれつきさして強くもなかったからだは、塔の天辺で暮らすようになってから更に弱くなった。動くことが滅多に無くなったせいか、今となってはものを食べることすらままならない。

 布と糸を調達するために、雪の夜道を歩いたとはいえ、たかだか十数分しか外に出ていないというのに、まさか体調を崩してしまうとは。あれもこれも、思い通りにゆかぬことばかり。

 いいや、むしろ、今までがおかしかったのかもしれない。

 今まで。

 思い出して、また吐き気がした。頭を振って、目の前のステエジをもう一度見遣る。

 舞台の上の人形は、未だ、不格好なそれを続けている。

 あいらしい顔は、ありとあらゆる表情をうつしていない。ともすれば怯えているようにすら見えるだろう。だと云うのに。

 もしかしたら彼は歌うことが、踊ることがすきなのかもしれない。

 西園寺は、何故か、そのときそう思った。
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