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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第3章 血まみれ道化師と血みどろお人形
 からん、ころん、からん、とビルヂングの外に出る。夕暮れ迫る街並みは、家路を急ぐひとびとで、そこそこの賑わいだった。

 看板の下、いつもの定位置に立ち、さて踊りだそうと思ったところで、陽色はそれに気付いた。

 気付いて、しまった。

 つんと鼻を刺す、それは、確かに、知っているにおいだった。
 けれども、嗅ぎなれてはおらぬ、なれていてはいけぬ、この、におい。鉄錆じみた、そうだ、これは。

 血のにおい。

 ぞう、っと背筋が震える。道行くひとびとは誰も、これに気付いていないようだ。

 陽色はふらふらと、そのにおいを追って歩き出した。

 正体のわからぬものは恐ろしい。犬猫の死骸か、喧嘩か、ゆき倒れかはわからぬが、原因がわかった方がこのまま怯えて仕事にならぬより、いい。

 陽色のその向こう見ずな勇気は、結果的に彼を危機に陥れた。

 小さな路地をひとつ、曲がる。その光景は全く唐突に、目の前に広がっていた。

 真赤。

 陽色のひとみと同じ紅色。

 艶やかな、おぞましい、悪夢色。

 陽色はそれを目で追った。追わずには、いられなかった。

 紅をぶちまけて倒れているのは、洋装の婦人であるらしかった。石畳の上に白と赤の斑模様のドレスが広がり、頭とおぼしき場所の付近にはたっぷりとフリルのあしらわれた日傘が転がっている。

 そして、その近くに立っているのは、
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