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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第3章 血まみれ道化師と血みどろお人形
 話を聞かせてくれますか。

 と、天使は云った。

 天使なのに、云うことは案外普通だな。

 陽色はぼんやり、考える。未だに頭がふわふわしていて、妙に現実感がない。

 四角い、灰色の部屋だ。屹度此処は天国と地獄の間。裁きの間なのだ。粗末な木の椅子も、目の前に横たわる同じくらい粗末な机も、いかにも罪びとを裁くに相応しい、気がする。

 灰色の壁にぽかりと空いた小さな窓を背に、天使が座っている。

 真白い軍服。弱い光にも柔らかく梳ける淡い色の髪。透き通るような青のひとみ。精悍な顔に、おだやかな微笑み。

 白く細い顎を同じく白い手袋に包まれた指の上に乗せ、穏やかに陽色を見つめてくる。

「ねえ、黙っていても、何もわからないですよ」
「……」

 陽色は言葉を失って、押し黙る。あまりにもあれよあれよという間に此処に連れてこらて、「話を聞かせて」もない。聞きたいのはこちらの方だ。

 あれは何なのか。
 此処は何処なのか。
 己はこれから、どうなるのか。

 自然に尖る視線を、そのまま目の前の、やけに白い人物に注ぐ。

 陽色に睨まれても気にした風もなく、彼はむしろくすくすと笑った。

「そんなに睨まないで。急に連れてきたのは、悪かったとは思っているんです」
「雨宮殿、あまりからかうのは関心しませんよ。……というか、何故わざわざ貴方が? 英吉利にいたのでは?」
「うふふ」

 天使の横に立っていた眼鏡の男(陽色は天使のおつきにしては地味だなあと思っていた)がぴしゃりと釘を刺した。雨宮、というのが天使の名前らしい。

 雨宮は天使らしく、天上の音色がごとき優しい微笑みを見せる。

「笑ってごまかさないでください」
「ごめんごめん、怒らないでくださいよ」
 ほがらかな声が、やたら軽やかに謝罪をくちにする。眼鏡の男は大きなため息をついた。

 地味に見えた顔つきは、よく見ればすっきりと整って、いかにも頭がよさそうであった。紺色の制服が、やたらとよく似合っていた。
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