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 縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第2章  サディスト
 
「俺が?優しい?」

「そう。電車乗ってても人を庇うしさ。それを判らないようにやるよね。だからカッコつけてるんじゃないことは知ってた。本当はフェミニスト? だよね。実はマナーも良く知ってる。だからナオキが、1年の時のバカ女にはワザと何も知らないフリをしてたんだろって言ってた。それがSってギャップがありすぎ」

「へえ。なんかよく見てるんだな」

「ただね、そんなリョウに感心するのは、私のレベルがリョウより低いからかなって思った。
そうすると私はリョウにふさわしくないし、価値観のズレが将来大きくなる。というのも理解できる」

「まてよ。相応しいかどうかの問題なら、さっきから俺はお前にふさわしくないっていってるんだろが」

「そうなのかな。それなら、リョウのSと一般的なDVの違いを説明してよ」

「うーん……。Sの特性は愛情だな。ぶちまけて言うとセックスにバックアップされた愛情だ。それがMという対象との関係だ。だから外国で言う本来の残虐性のあるSとは別物なんだよ。DVには愛情はない。ただの自己チュー。我が儘」

 スズが口に手を当てて笑った。

「全然解らないんですけどー。わかったような気がするところは、DVはあくまで自分本位ということなのね。じゃあDVのベースは怒り? 憎しみもある? それでSのベースは愛情。Sなのに愛情ってなに」

「あと数メートルで山頂に着いて、凄くいい景色が見られるのなら、無理矢理でも頂上に引き上げてやりたくなるだろ」

「具体的にはどんなふうにするとかが知りたい」

「それは俺の核に極めて近くなるからさ。でもまあいいか。スズはオナって絶頂を感じた事があるか?」

「ええーっ。それ訊く!」
 スズは悲鳴のような声を出し、赤くなった頬を両手で押さえた。

「気持ちよくなって、体中に力が入って全身が震えた後で力が抜けることがあるわ」

「うん。それが医学用語で言う絶頂感だ。その後でもっと気持ちよくさせて、泣くほどいかせて苦しむ姿を見て楽しむのが俺のSだ。だからスズのMが苦しさを快感に変えられるかどうか。スズにそんな覚悟ができるかどうか、ということだな」
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