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RINZIN ー隣人ー
第11章 第十話
(──クソッ、なんなんだよあのおっさん!)

 部屋へと戻った涼太は動揺を隠せずにいた。

 芽生の男関係が奔放であろうことは、これまでに聞いている話からなんとなく察してはいたものの──実際に部屋に男を連れ込む現場を目撃したばかりか、その相手はお世辞にも清潔感があるとは言えない肥えた中年オヤジである。

 (まさかあんなおっさんとヤルのか……? 男なら誰でもいいのかよ……)

 涼太の胸中は実に複雑なものだった。そもそも、芽生とはセックスこそしたものの関係としては未だ「おとなりさん」である。涼太が感情のまま一方的に交際を申し込んだ、という事実があるだけだ。よって、芽生が誰となにをしていようがそれを咎める筋合いなど、残念ながら涼太にはなかった。

 しかしそれとは別に、人には心証、というものがある。

 仮に男を連れ込むにしろ、もっと若かったり、あるいはイケメンであったりなど、そういうことであればいい気はしないにせよそれなりに腑に落ちる部分もあったであろう。なにせ芽生の容姿は抜群にかわいいのだから、いくらだって男を選り好みできるはずなのだ。

 それがよりによって、あんな脈絡のない中年オヤジである。涼太は一瞬、もしかしたらあれは芽生の父親なのかもしれない──との考えもよぎったが、階段を昇る二人の親密さから到底そうとは思えなかった。

 悶々とする涼太。
 昨夜から今朝にかけてたしかに自分の腕のなかにいた女が、今となりの部屋でほかの男と過ごしているという事実──この妙に生々しい距離感といい、それは単純に嫉妬とも言い難い、複雑な感情だった。

 しばらくして──壁の向こうから物音とともに、かすかに声が漏れ聞こえてくる。

 (お、おい……マジかよ──)

 涼太はいてもたってもいられず、壁に耳をくっつけてその音を聞いた。
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