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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
 白レンガで作られた家や店が綺麗に並ぶシャムスの王都、ルチェソラーレ。陽の光の下で人々は汗水たらし働き、笑い合う。活気づいた街の広場で、複数の少年少女が、ひとりの少年を囲んでいる。囲まれた黒髪の少年の頬には、三日月の焼印があった。
「この恥知らず!」
「不徳の子、お前なんか死んじゃえ!」
「黒髪に焼印なんて最低じゃん」
 子供達は心無い言葉を口にしながら、黒髪の少年に石を投げつけたり、太い枝で叩いたりしている。黒髪の少年は口を一文字にし、涙と声をぐっとこらえていた。
 周りにいる大人達は子供達を止めるどころか、黒髪の少年を嘲笑っている。

「君達、みっともない真似はやめないか」
 凛とした女性の声が、頭上から降ってきた。子供達が見上げた先には、銀色と臙脂色の鎧を身にまとった女性が立っている。彼女は長く美しいブロンドの髪をたなびかせながら、子供達を鋭い目つきで見下ろしている。威圧的な彼女の目に、子供達は固まる。彼女の名前はカミリア•ケリー。シャムスの騎士団長だ。氷のような冷たい眼差しと、迷いのない戦い方から、氷の戦乙女と恐れられている。 

「その子が何をしたというんだ?」
「だ、だって、コイツ、黒髪で……」
「そ、そうよ! それに、顔に焼印だってあるわ!」
 少年がおずおずと口を開くと、少女も黒髪の少年を指差しながら、声を荒らげる。カミリアは鋭い目つきを、更に鋭くした。子供達は小さな悲鳴を上げ、尻もちをついたり、立ち尽くしたまま震えたりする。
 大人達はカミリアに冷ややかな目線を投げかけた。

「その子が黒髪だと、君達にどう迷惑がかかる? 顔に焼印があるから、なんだというんだ?」
 カミリアの言葉に、子供達はうつむく。ただひとり、黒髪の少年だけは、彼女をまっすぐ見上げていた。
「髪の色なんて関係ない。焼印だって、この子が罪を犯した印というわけではないだろう。親は親、子は子、別の人間だ。髪色も焼印も、この子をいじめていい理由にはならない。他人を陥れたりいじめたりするのは、卑怯者のすることだ」
「な、なんだよ、身体売って騎士団長になったくせに!」
「っ!」
 少年のひとりが叫ぶように言うと、彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
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