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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
中庭に来るのは久方ぶりだった。ラウルの姿はない。カミリアは中庭を縁取るように咲き乱れる花々を眺めて待つことにした。中庭には何度も来ているが、こうして花を愛でるのは初めてだ。色とりどりの花が咲いているが、中でもカミリアの目を引いたのは、黄色い小ぶりの花だ。この花は鐘のような形をしており、とても愛らしい。
「可愛い花……」
目を細めて黄色い花を愛でていると、足音が聞こえた。顔を上げなくても、誰か分かる。
「お待たせ、カミリア。その花が気に入ったかい?」
ラウルはいつもの穏やかで優しい笑みを浮かべ、カミリアの隣にしゃがみこむ。
「外で私の本名呼んでもいいの?」
「今屋敷にいるのは、僕達とオネスト、ルナの4人だからね。他の使用人は外に買い出しに行ったり、用事を済ませにいってるよ」
いくら事情を知っている人しかいないとはいえ、外で本名を呼ばれるのは落ち着かない。いつ誰が帰ってくるか分からないというものあるが、ラウルの命を狙っている者が、息を殺して屋敷に忍び込んでるかもしれない。
「怖い顔してどうしたの?」
「外で本名を呼ばれるのは、落ち着かないの」
「分かったよ、ソニア」
ラウルはカミリアお偽名を呼びながら、鐘のような黄色い花に触れる。花に話しかけているように見えて、少し滑稽だ。
「ソニアっていう名前は、この花から取ったんだよ」
「この花、ソニアっていうのね」
「いや、サンダーソニアっていうんだ。花言葉は祈り、福音、信頼、そして純粋な愛。そうそう、意地っ張りっていうのもあったね。カミリアにぴったりだと思って、この花から命名したんだよ」
「最後のは聞かなかったことにする」
カミリアが一瞬だけ眉間に皺を寄せると、ラウルはそういうところだよと笑う。
「そんなことより、どうしてここに呼んだの?」
「向こうで話そうか」
ラウルはベンチを指さす。ベンチに並んで座ると、カミリアの膝に長方形の箱が置かれた。箱は紺色で、四隅には銀の装飾が施されている。シンプルだが、品のある美しい箱だ。
「可愛い花……」
目を細めて黄色い花を愛でていると、足音が聞こえた。顔を上げなくても、誰か分かる。
「お待たせ、カミリア。その花が気に入ったかい?」
ラウルはいつもの穏やかで優しい笑みを浮かべ、カミリアの隣にしゃがみこむ。
「外で私の本名呼んでもいいの?」
「今屋敷にいるのは、僕達とオネスト、ルナの4人だからね。他の使用人は外に買い出しに行ったり、用事を済ませにいってるよ」
いくら事情を知っている人しかいないとはいえ、外で本名を呼ばれるのは落ち着かない。いつ誰が帰ってくるか分からないというものあるが、ラウルの命を狙っている者が、息を殺して屋敷に忍び込んでるかもしれない。
「怖い顔してどうしたの?」
「外で本名を呼ばれるのは、落ち着かないの」
「分かったよ、ソニア」
ラウルはカミリアお偽名を呼びながら、鐘のような黄色い花に触れる。花に話しかけているように見えて、少し滑稽だ。
「ソニアっていう名前は、この花から取ったんだよ」
「この花、ソニアっていうのね」
「いや、サンダーソニアっていうんだ。花言葉は祈り、福音、信頼、そして純粋な愛。そうそう、意地っ張りっていうのもあったね。カミリアにぴったりだと思って、この花から命名したんだよ」
「最後のは聞かなかったことにする」
カミリアが一瞬だけ眉間に皺を寄せると、ラウルはそういうところだよと笑う。
「そんなことより、どうしてここに呼んだの?」
「向こうで話そうか」
ラウルはベンチを指さす。ベンチに並んで座ると、カミリアの膝に長方形の箱が置かれた。箱は紺色で、四隅には銀の装飾が施されている。シンプルだが、品のある美しい箱だ。