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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第5章 5章 陰謀渦巻く舞踏会
「それは失礼。ところでティミッドが君を探していたよ」
「え? 彼が来ているのかい?」
ラウルは目を丸くする。来ているだけでこんなに驚かれるティミッドがどんな人物なのか気になり、ラウルを見る。彼は困り顔をしていた。
「向こうの壁際にいたよ」
アストゥートは自分の斜め後ろを指差しながら言う。そちらに目を向けるが、人が多くてここからでは見えない。
「そうか……。ソニア、悪いけどここで待っててくれるかい? ティミッドは女性恐怖症でね。近くにいるだけで何も喋れなくなってしまうんだ」
「けど……」
離れてしまってはラウルの護衛ができない。それに、アストゥートがいる。ラウルがカミリアの不安を和らげるように、柔らかな笑顔を向ける。
「大丈夫、すぐに戻るから。僕がいない間、他の男と踊ってはいけないよ」
そう言ってラウルはティミッドがいる方向へ行ってしまう。すかさずアストゥートが距離を詰めて来て、1歩下がる。だが、アストゥートは再び距離を詰めてくる。
「そう警戒しないで、ソニア。俺とも踊ってくれないか? 君に一目惚れしたんだ」
アストゥートは馴れ馴れしくカミリアを抱き寄せる。嫌悪で肌が粟立ち、反射的にアストゥートを突き放した。
「私は、ラウル様の婚約者です。あの方を心の底から愛していますので」
アストゥートを睨みつけると、彼はあからさまにがっかりする。
「あーあ、フラれちゃった。それほどまでに愛し合ってるカップルを邪魔するわけにはいかないね」
意外にもあっさりと、アストゥートはその場を去っていく。安堵するも、気は抜けない。カミリアは遠ざかっていく背中を睨みつけた。
アストゥートはひとり、外に出て葉巻に日をつけた。青白い三日月を睨みつける。
「あの女……、この俺をフるなんていい度胸してんな」
ソニアの生意気な目を思い出し、イライラして近くの石像を蹴り飛ばす。地面が柔らかな土だったおかげで割れることも、大きな音が出ることもなかった。
アストゥートは倒れた石像に腰掛け、足を組んだ。
「え? 彼が来ているのかい?」
ラウルは目を丸くする。来ているだけでこんなに驚かれるティミッドがどんな人物なのか気になり、ラウルを見る。彼は困り顔をしていた。
「向こうの壁際にいたよ」
アストゥートは自分の斜め後ろを指差しながら言う。そちらに目を向けるが、人が多くてここからでは見えない。
「そうか……。ソニア、悪いけどここで待っててくれるかい? ティミッドは女性恐怖症でね。近くにいるだけで何も喋れなくなってしまうんだ」
「けど……」
離れてしまってはラウルの護衛ができない。それに、アストゥートがいる。ラウルがカミリアの不安を和らげるように、柔らかな笑顔を向ける。
「大丈夫、すぐに戻るから。僕がいない間、他の男と踊ってはいけないよ」
そう言ってラウルはティミッドがいる方向へ行ってしまう。すかさずアストゥートが距離を詰めて来て、1歩下がる。だが、アストゥートは再び距離を詰めてくる。
「そう警戒しないで、ソニア。俺とも踊ってくれないか? 君に一目惚れしたんだ」
アストゥートは馴れ馴れしくカミリアを抱き寄せる。嫌悪で肌が粟立ち、反射的にアストゥートを突き放した。
「私は、ラウル様の婚約者です。あの方を心の底から愛していますので」
アストゥートを睨みつけると、彼はあからさまにがっかりする。
「あーあ、フラれちゃった。それほどまでに愛し合ってるカップルを邪魔するわけにはいかないね」
意外にもあっさりと、アストゥートはその場を去っていく。安堵するも、気は抜けない。カミリアは遠ざかっていく背中を睨みつけた。
アストゥートはひとり、外に出て葉巻に日をつけた。青白い三日月を睨みつける。
「あの女……、この俺をフるなんていい度胸してんな」
ソニアの生意気な目を思い出し、イライラして近くの石像を蹴り飛ばす。地面が柔らかな土だったおかげで割れることも、大きな音が出ることもなかった。
アストゥートは倒れた石像に腰掛け、足を組んだ。