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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
「邪魔すんなよ、負け犬副団長。せっかく黒髪女を排除しようとしてたのによ」
「そうだそうだ! 負け犬はすっこんでろよ」
「貴様ら!」
 立ち上がろうとするカミリアの肩に、ラウルの手が置かれる。見上げると、ラウルは穏やかな笑みを浮かべている。
「カミリア、ここは僕に任せて」
 カミリアが返事をする前にラウルは立ち上がり、彼らの元へ行く。カミリアはハーディが使っていた木刀を手繰り寄せて握った。

「ラウル団長も、そんな黒髪女追い出しちゃってくださいよ。ソイツ、絶対に災いを持ってきますって」
「しかも女だしな」
 ふたりの下品な笑い声に、ラウルの笑い声も重なる。殺意を覚えたカミリアが立ち上がろうとすると、何かを叩く音がしたのと同時に、笑い声が止まる。

「なっ……!?」
「何するんですか!?」
「君達、面白いこと言うね。災いをもたらすのも、追い出されるのも、君達なんだよ?」
 ドゥム派達の顔が、見る見るうちに青ざめていく。逃げようとするふたりの首に木刀が叩き込まれ、ふたりは悲鳴を上げる間もなく倒れる。

「ふぅ……。ジェイド、ラート、このふたりを拘束して牢獄へ」
「はっ!」
 ジェイドとラートは気絶したふたりを拘束し、牢獄に連れて行く。ラウルは途中まで目で追うと、カミリアの所に戻ってくる。
「さっき、足を挫いただろ? 医務室に運ぼう」
「いえ、ひとりで行きます」
 木刀を杖代わりにして立とうとするも、激痛で座り込んでしまう。ラウルは苦笑しながら、カミリアを抱き上げる。一瞬何が起きたのか分からなかったが、他人の体温とあまりにも近いところにあるラウルの顔に、お姫様抱っこされていることに気づく。

「お、降ろしてください!」
「ダーメ。君は無理しがちだろ? ハーディ、リア。悪いけど稽古まとめてくれる?」
「はーい」
 リアは呑気に返事をするが、ハーディは憂色の瞳でカミリアを見つめる。ハーディの視線に気づいたカミリアは、大丈夫だと言うように、微笑みかける。だが、ハーディの表情は曇ったまま。
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