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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
 騎士は木刀を持ち直すと、今度は垂直に斬り込む。だが、それも軽く弾かれてしまう。木刀は音を立てて地面に落ちた。
「さっきのは悪くなかったけど、ちゃんと木刀握れてなかったね。ケント、君は動きを小さく、剣を持ち直す時は正確に。これを守れば、一気によくなるはずだ。次」
「ありがとうございます!」
 ケントは一礼すると、離れた場所で剣を持ち直す練習を始めた。

 それからラウルは、7人の騎士達と休むことなく手合わせしていった。少し剣を交えて的確なアドバイスをし、次の騎士と手合わせをする。その様子を見て、カミリアは全てにおいて自分は負けたのだと思い知る。
 カミリアも手合わせはしていたが、あそこまで効率よくアドバイスはできない。
 何よりあの短期間ですべての騎士の名前を覚え、騎士達を惹き付ける、記憶力とカリスマ性に圧倒された。食堂でしていた無駄話も、無駄ではなかったと認めざるを得ない。

 8人目、ハーディがラウルの前に立つ。ハーディが1歩踏み出した途端、足元に折れた木刀が投げつけられる。突然のことにハーディは避けきれず、転びそうになる。その先には折れた木刀とほぼ同時に投げられたフレイルがあった。フレイルとは棒にトゲがついた球体が鎖に繋がれている武器だ。この上に転んだら、大怪我をしてしまう。
「ハーディ!」
 カミリアはハーディの腕を引っ張った。その反動で、ハーディの下敷きになる形で倒れてしまう。同時に、足首に激痛が走る。

「カミリア、ハーディ!」
 ラウルと数人の騎士が駆け寄ってくる。リアはカミリアの上にいるハーディを抱き起こした。
「隊長、大丈夫?」
「えぇ、私はなんとか……。ケリー副団長、すいません」
「私はいい。それより……」
 カミリアが睨んだ先には、ブロンド髪の騎士がふたり。ふたりはこちらを見て下卑た笑みを浮かべている。このふたりはドゥム派の騎士だ。あの日は見回りに行っていたため、ドゥムの共犯者になることなく、こうして騎士団に身を置いている。
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