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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
「けど、フラッといなくなるのなら、私に怒られたっていいじゃない」
「君に嫌われたくなかったんだよ」
 まっすぐ見つめられ、言葉に詰まる。上気する体温を誤魔化そうと、ぬるくなった紅茶を飲むも、効果はない。
「そういうこと、色んな女性に言ってきたんでしょう?」
「僕は君だけだよ」
 茶化そうとするも失敗に終わり、甘い空気が色濃くなる。どう切り抜けようか必死に考えていると、ラウルは小さく笑う。

「そろそろ君を部屋に案内しようか。慣れない環境で疲れただろう? 少しはやいけど、ゆっくり休むといい」
 ラウルは立ち上がると、カミリアに手を差し伸べる。振り払うのも失礼だと思い、ラウルの手を借りて立ち上がる。自分より少し高い体温に、お姫様抱っこされた日のことを思い出してしまう。
 ラウルの部屋を出ると、彼は左隣の部屋の前で止まった。

「ここが君の部屋だよ。気に入ってくれるといいのだけど」
 そう前置きをすると、ラウルはドアを開けた。部屋の中に入り、カミリアは言葉を失う。
 広々とした部屋は、カミリアが過ごしていた団長室の倍以上ある。大きな窓には品のいい青色のカーテンが。床には踏み心地のいい、紺色のカーペットが敷かれている。壁紙も薄い水色で、涼し気な部屋だ。クリーム色の調度品のおかげで、寒色系でまとめられているのに、冷たい印象はない。

 大きな鏡がある化粧台やクローゼットなどがあるが、カミリアが惹かれたのは、一面の壁を覆う本棚だ。その中には軍学書はもちろんのこと、様々な本が並んでいる。中でも目についたのは、子供向けの童話本。大人向けの本がぎっしり詰まった本棚で、そこだけが異質で柔らかな雰囲気を放っていた。
「何故童話が?」
「軍学書とかもいいけど、こういう本を読むのも息抜きになると思って。他にも、恋愛小説とか、推理小説とか色々揃えてあるよ。気に入ったものはシャムスに持ち帰ってもいいからね」
「え?」
 驚いて振り返ると、ラウルはイタズラっぽく笑っている。その笑みを見て、あまりにも馬鹿馬鹿しく、あり得ない結論にたどり着く。
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