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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 ルナが椅子を引き、座りやすいようにしてくれる。カミリアが座るのと同時に、少し椅子を前に出してくれた。
「ありがとう」
 カミリアが礼を言うと、ルナは会釈してカミリアの後ろに立つ。今朝は気にする余裕がなかったが、人に見られながら食事をするのは居心地が悪い。
(どうせいるなら、一緒に食べればいいのに)
 使用人が主人達と食事をすることはないと頭では分かっているものの、そう思わずにはいられなかった。

 彼らの生活リズムは知らないが、きっと自分達より遅く食べるのだろう。空腹の状態で主人達の食事を見て、後ろに立っていなければいけない。しかも、物欲しそうな顔をしてはいけないのだ。さぞかし辛いだろう。
 使用人への勝手な感傷に浸っていると、ラウルが入ってきた。
(そういえば、ラウルはどうしてひとりなの?)
 自分の後ろには教育係のサージュと世話係のルナがいるが、ラウルの後ろには誰もいない。この屋敷の主人なら、執事やメイドを従えてくるのが自然だろう。

「ソニア、どうかした?」
「私にはメイドや教育係がいるのに、なんであなたはひとりなんだろうって思って」
 素直に疑問を口にすると、ラウルは困ったように笑う。
「いつもは執事がいるんだけどね。彼、極度の人見知りで。紹介しようと思ったんだけど、1ヶ月なら逃げ切れるって言ってこの通りさ」
 そう言ってラウルは、本来なら執事がいるであろう右を横目で見て苦笑した。

 カミリアは呆れ返ってため息をつく。騎士と執事は違う職種ではあるが、人に仕えるという意味では同じだ。人見知りを理由に、主人のそばを離れるなど言語道断。これが自分の部下だったら、昼食抜きで1日中素振りさせていただろう。
「ここにいない分、違う仕事をやってもらってるからね。さぁ、冷めないうちに食べよう」
 顔に出ていたいのか、ラウルは執事のフォローをしてから手を合わせた。カミリアも手を合わせ食事を始める。
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