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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 
「凜工房の時計なんて、なかなか手に入らないんだ。何しろ一人の職人が一つ一つ手作りで拵えている稀少品だから、大量生産できない。時計マニアなら、誰でも欲しがる垂涎の品さ」
 直輝は腕に填めた時計を見て、満足そうに言う。
「それにしても、紗英子が凜工房を知ってるなんて、少し愕いたよ」
「直輝さんって、時計マニアなの?」
 え、と、小さな呟きが洩れた。意外なことを言われたと思ったのは明白だ。直輝は眼をわずかに見開いて紗英子を見返した。
 戸惑いが韓流スターに似た端正な顔に浮かんでいる。
「まあ、そう呼ばれてもおかしくはないだろうな。それが、どうかしたのか?」
「この時計ね。何を選んだら良いか判らなくて、有喜菜に相談したのよ」
 微妙な沈黙があった。直輝はもう一度、腕時計を眺める。
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