この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠
「―有喜菜に逢ったのか?」
「ええ」
その刹那、直輝の表情が動いたような気がして、紗英子はハッと胸をつかれた。慌てて窺い見ても、夫の整った面に起こった爪の先ほどの変化はもう完全に消えていた。
夫に愛される妻。夫のことを何でも知っていると自負している自信に満ちた妻。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。自分は夫について―直輝のことをすべて知っているといえるのか。
紗英子の中で拭いようのない疑念が生まれた瞬間であった。
紗英子は目まぐるしく思考を働かせた。こういう場合、夫をあからさまに責め立てたり、追及したりしてはいけない。確か、女性週刊誌の〝夫の効果的な操縦法〟特集に書いてなかったか。
「ねえ、一つだけ訊いても良い?」
紗英子は甘えるような口調で訊ねた。
「ええ」
その刹那、直輝の表情が動いたような気がして、紗英子はハッと胸をつかれた。慌てて窺い見ても、夫の整った面に起こった爪の先ほどの変化はもう完全に消えていた。
夫に愛される妻。夫のことを何でも知っていると自負している自信に満ちた妻。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。自分は夫について―直輝のことをすべて知っているといえるのか。
紗英子の中で拭いようのない疑念が生まれた瞬間であった。
紗英子は目まぐるしく思考を働かせた。こういう場合、夫をあからさまに責め立てたり、追及したりしてはいけない。確か、女性週刊誌の〝夫の効果的な操縦法〟特集に書いてなかったか。
「ねえ、一つだけ訊いても良い?」
紗英子は甘えるような口調で訊ねた。