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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 
 それが付き合っていなかったという理由にも証拠にもならない。内心はそう言い返したかったけれど、まさか、口にはできない。
 だがと、思い直した。仮にそのようなことが―それに近いことがあったとして、それがどうしたというのか。自分は今や直輝の妻であり、直輝との間には恋人として付き合った九年と結婚して以来、夫婦として過ごした十二年間がある。その間、紗英子はずっと直輝の特別な存在であった。
 万が一、有喜菜と直輝との間に何らかの淡い感情があったのだとしても、今になって、そのことで悩む必要があるとは思えない。まさに、紗英子が直輝とともに築いてきた年月の重みの前では、取るに足りないことだ。
「クリスマスプレゼントとして腕時計を贈ったらってアドバイスしてくれたのは有喜菜なのよ」
 また沈黙。しばらくして、直輝が小さく応えた。 
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