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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠
もう、有喜菜と海外旅行なんてすることもないだろう。夫と有喜菜の間に、紗英子の知っている以上のものが存在すると知った今、有喜菜とは今度、あまり拘わりたくはなかった。判っている。二十年以上も昔、互いに幼かった子どもの頃の出来事でいちいち目くじら立てても仕方ない。
だが、プラトニックであれ、何かしらの感情が二人の間にかつてあったのだとすれば、紗英子にしてみれば二人にまんまと騙されたような気がするのは当然だった。いや、プラトニックだからこそ、余計に嫌なのだ。肉欲だけの交わりであれば、所詮はそこまで。しかし、身体よりもより深い部分―精神的な繋がりがあるのなら、その方がよほど厄介といえよう。
しかし、ここでこれ以上事を荒立てるのは、けして利口とはいえなかった。大切なのは、たとえ二十二年かかっても、やっと直輝が心の奥にしまっていた大切なものを紗英子にも見せても良いという気持ちになった―そのことだろうと思う。
だが、プラトニックであれ、何かしらの感情が二人の間にかつてあったのだとすれば、紗英子にしてみれば二人にまんまと騙されたような気がするのは当然だった。いや、プラトニックだからこそ、余計に嫌なのだ。肉欲だけの交わりであれば、所詮はそこまで。しかし、身体よりもより深い部分―精神的な繋がりがあるのなら、その方がよほど厄介といえよう。
しかし、ここでこれ以上事を荒立てるのは、けして利口とはいえなかった。大切なのは、たとえ二十二年かかっても、やっと直輝が心の奥にしまっていた大切なものを紗英子にも見せても良いという気持ちになった―そのことだろうと思う。