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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 もし、紗英子自身に姉妹がいれば、血縁関係のある間柄の方がより望ましいのだとも言われた。生まれてくる子どもはむろん遺伝的には我が子に相違ないが、やはり自分が生むわけではないので、情が湧きにくいときがある。そういう場合、姉妹が生んだ子どもだと、割とすんなりと受け容れられるものだというアドバイスも貰った。
 だが、紗英子には残念なことに、姉妹はいない。七十を過ぎる母親に幾ら何でも頼むわけにもゆかず、結局、誰か他人に依頼するしかなかった。
 今、紗英子が座っている場所は、なだらかな傾斜になっていて、その途中だった。
 やわらかな下草がびっしりと生えていて、緩やかな斜面を降りた先は河原になっている。その向こうは澄んだ川面が冬の陽射しを浴びて煌めいていた。
 見れば、河原を若い夫婦が散歩でもしているのか、ゆっくり歩いている。ベビーカーに乗っているのは一歳くらいの赤ん坊で、父親らしい男性が押していた。その傍らをまだ若い母親が寄り添うようにして歩いている。
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