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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 良い光景だと素直に今なら思えた。
 たとえ、この計画が上手くいこうといくまいと、やれるだけのことをやれば良い。
 若い子連れは紗英子が眺めているのに気づいてもいないのか、ゆっくりと下の道を通り過ぎていった。子どもが何か面白いことを言ったらしい。父親が子どもに何か話しかけ、母親は弾けるように笑った。
 澄んだ笑い声が清澄な真冬の大気に溶けてゆく。ありふれた、けれど、心温まる和やかな光景である。名残惜しい気持ちで、親子連れを見送っていると、背後から声をかけられた。
「紗英」
 紗英子はゆっくりと振り向いた。
「ごめんね。仕事中なのに」
 有喜菜は首を振った。
「なに水臭いことを言ってるのよ?」
 紗英子の隣に並んで座り、笑いながら言った。
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