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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第3章 ♠Round.Ⅰ(喪失)♠
数日後、紗英子は病院の待合室にいた。ここの病院は以前、通っていた大きな総合病院ではない。もう妊娠の可能性はないと告げられた時、できるなら小さな個人病院を紹介して欲しいと紗英子の方から頼んだのだ。
結果としては、それで良かったのかどうか。確かに自宅マンションからも車で2、30分ほどで通うのには便利は良い。しかし、ここは産科・婦人科の看板を掲げてはいても、実質的には産婦人科に通う妊婦ばかりだ。紗英子のようにもう子どもを望めない女には、いささか場違いな雰囲気は否めない。
何しろ、紗英子の入っている病室の前が新生児室なのだ。大変人気がある病院のため、出産も順番待ちといった状態で、紗英子が入院できたのも、そこの院長がかかっていた総合病院の不妊外来医師の後輩だから―というコネがあったからこそだった。
だから、子宮摘出で入院するのに、新生児室の真ん前の部屋を当てられたと文句を言える筋合いでもなかった。現に、入院前に主任と呼ばれる四十ほどの看護士が紗英子に打診してきたのだから。
結果としては、それで良かったのかどうか。確かに自宅マンションからも車で2、30分ほどで通うのには便利は良い。しかし、ここは産科・婦人科の看板を掲げてはいても、実質的には産婦人科に通う妊婦ばかりだ。紗英子のようにもう子どもを望めない女には、いささか場違いな雰囲気は否めない。
何しろ、紗英子の入っている病室の前が新生児室なのだ。大変人気がある病院のため、出産も順番待ちといった状態で、紗英子が入院できたのも、そこの院長がかかっていた総合病院の不妊外来医師の後輩だから―というコネがあったからこそだった。
だから、子宮摘出で入院するのに、新生児室の真ん前の部屋を当てられたと文句を言える筋合いでもなかった。現に、入院前に主任と呼ばれる四十ほどの看護士が紗英子に打診してきたのだから。