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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 誰だって、急にこんなことを言われたら、戸惑うし迷うのは当然だ。しかし、何故か、紗英子はある種の確信を抱いていた。恐らく、有喜菜は自分の頼みを断りはしない。紗英子と直輝の子どもを生むことを最終的には承諾するはずだ。
「もちろん、お礼はちゃんとするわ。友達だから、ただで生んで欲しいとか、安くしてなんてことは言わない。相場として考えられる報酬に少し上乗せして支払う。それで、引き受けて貰えないかしら」
 やはり、有喜菜といえども、謝礼のことは気になるはずだ。彼女の実家は既に往時の勢いはない。有喜菜が学生の頃は手広く商売をやっていた父親が数年前に亡くなり、跡を継いだ弟が事業に失敗した上に莫大な借金を作ったからである。
 子どももいない一人暮らしでは、慎ましく暮らせば出費は最低限に抑えられるだろうけれども、何かあっても実家を頼ることはできない状況なのだ。
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